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2022.09.27

筋トレとお酒〜禁断のお話〜

筋トレを頑張っている人に悲しいお知らせなのですが、

「トレーニング後のアルコール摂取は筋肥大の効果を減少させる」

という事実を知っていますか?

トレーニング後のアルコール摂取は格別な幸福を与えてくれます。厳しく、辛い自分との戦いを終えたあとに、最大の安らぎを与えてくれるのがアルコールなのです。事実、スポーツ選手でも多くがアルコールを好んで摂取しています(O’Brien KS, 2007)。

しかし、現代のスポーツ医学では、トレーニング後のアルコール摂取はトレーニング効果を3割も減少させると言います。

今回は、この残酷な事実を示した研究報告とともに、近年、明らかになった新たな事実をご紹介したいと思います。残酷な世界から目を背けてはいけません。

◆ 筋トレ後のアルコール摂取は筋タンパク質の合成作用を減少させる

これまでにもトレーニング後のアルコール摂取が筋肉の回復を遅延させるという知見が多くの研究者によって報告されていました。

2010年、ニュージランド・マッセイ大学のBarnesらは、トレーニング後のアルコール摂取が遠心性収縮トレーニングによって生じた筋肉の微細損傷の回復を妨げることが明らかにしています。

しかし、トレーニング後のアルコール摂取が筋肥大の効果を妨げるという直接的な根拠は示されていませんでした。

 筋肉量は、筋肉のもととなる筋タンパク質の合成と分解のバランスによって決まります。私たちの筋肉量が保たれているのは、筋タンパク質の合成量と分解量のバランスがとれているからです。トレーニングにより筋肥大が起こるのは、筋タンパク質の合成量が分解量を上回るからなのです。

 2000年代に入り、この筋タンパク質の合成・分解作用を測定する技術が確立されると、これまでの筋トレの常識を一新する多くの知見が報告されるようになりました。

 そして2014年、オーストラリア・RMIT大学のParrらによって衝撃な事実が報告されたのです。

Parrらは、筋タンパク質を測定する技術を用いて、トレーニング後のアルコール摂取が筋タンパク質の合成作用に与える影響を調査しました。

週に3回程度のトレーニングを行っている20代の被験者を対象に、トレーニング直後にプロテインのみを摂取するグループ、アルコールとプロテインを摂取するグループ、アルコールと炭水化物を摂取するグループに分け、トレーニング後2時間と8時間の筋タンパク質の合成率を計測しました。アルコールはウォッカのオレンジジュース割りです。

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Fig.1:Parr EB, 2014より引用

その結果、プロテインのみを摂取したグループの筋タンパク質の合成率に比べて、アルコールを摂取した2つのグループの合成率は有意な低下を示しました。アルコールとプロテインを摂取したグループは24%、アルコールと炭水化物を摂取したグループは37%もの合成率の低下を示したのです。

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Fig.2:Parr EB, 2014より引用

これらの結果から、Parrらは、トレーニング後のアルコール摂取は筋タンパク質の合成作用を妨げる働きがあり、トレーニング効果を損なう可能性を示唆しました。また、この知見をスポーツ選手だけでなく、トレーナーに提供することによって、アルコールの摂取を制限するべきだと警鈴を鳴らしています(Parr EB, 2014)。

しかし、話はこれで終わりません。

現在では、トレーニング後のアルコール摂取が筋肥大の効果を妨げるメカニズムまで明らかにされつつあるのです。

◆ 筋トレ後にアルコールを摂取してはいけない理由(メカニズム)

2015年になるとペンシルバニア州立大学のSteinerらは、アルコール摂取が筋タンパク質に与える影響について分子生物学的な側面から考察したレビューを報告しました。

筋タンパク質は、合成作用を促すタンパク質キナーゼ(mTOR)と分解作用を促すユビキチン・プロテアソーム経路(UPP)によって制御されています。

トレーニングやタンパク質の摂取は、mTORを活性化させることで筋タンパク質の合成作用を高め、筋肥大を生じさせます。

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 Steinerらは、動物研究やヒトの分子生物学研究の知見から、アルコール摂取が筋タンパク質の合成作用を妨げる原因が「mTORの活動性の低下」にあると結論づけました。しかし、アルコール摂取によるUUPの活動性に対する作用を断定するまでには至らなかったとのことです(Steiner JL, 2015)。

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トレーニング後のアルコール摂取は、トレーニングやタンパク質の摂取により活性化するmTORの活動性を減弱させることによって、筋タンパク質の合成作用を低下させるのです。

話はまだ続きます。

2016年になるとオーストラリア・カトリック大学のSmilesらはトレーニング後のアルコール摂取がオートファジーに与える影響について検証しました。

オートファジーは「自食作用」とも呼ばれ、細胞内に必要以上のタンパク質の蓄積を防いだり、タンパク質のリサイクルを行うことで生体の恒常性を維持する仕組みです。

Smilesらは、このオートファジーがトレーニング後のアルコール摂取によって影響を受けると仮説を立てたのです。

トレーニング後にアルコール摂取をした被験者から筋細胞を抽出し、分析を行った結果、Smilesらの仮説どおり、オートファジーの活動性が変化していることがわかりました。そして筋細胞のアポトーシス(細胞の死)が生じていることが示されたのです。

この結果からSmilesらは、オートファジーの活動性の変化が筋細胞のアポトーシスを誘発し、間接的に筋タンパク質の分解作用を活性化させると推測しました(Smiles WJ, 2016)。

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筋肉の量は、筋タンパク質の合成作用と分解作用のバランスによって決まります。SteinerらとSmilesらの報告により、トレーニング後のアルコール摂取は、筋タンパク質の合成作用を促すmTORの活動性を弱めるとともに、オートファジーの作用変化によって筋タンパク質の分解作用を高めることが示唆されているのです。

現代のスポーツ医学はこのような背景をもとに純然たる真実を告げているのです。

「トレーニング後のアルコール摂取は筋肥大の効果を減少させる」

私たちはこの残酷な真実を受け入れなければなりません。

「筋トレ後のアルコール摂取は筋肥大の効果を3割減少させる」

2014年、僕らにとって残酷な真実が明らかになりました。この真実をブログで紹介してから多くのコメントをいただき、「筋トレ後の至福のひとときが奪われる!」という悲鳴が渦巻いていたのを覚えています。

しかし現実はどこまでも残酷です。筋トレとアルコールの残酷な真実には続きがあったのです。

2017年、さらなる真実を報告したノース・テキサス大学のDuplantyらこう述べています。

「筋トレ後のアルコール摂取による筋肥大の減少には性差がある」

今回は、筋トレとアルコールの最新の報告をご紹介します。この残酷な真実を受け入れなければならないのは、男女のどちらなのでしょうか。

◆ 筋肥大のメカニズムとアルコール

筋肉はいくつもの筋線維が束になったもので、筋線維は筋原線維が束になったものです。そして筋原線維はアクチンやミオシンといった筋タンパク質によって合成されます。筋肉を肥大させるためには筋タンパク質の合成作用を高めなければなりません。

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 図:Neuroscience of fandamentals for rehabilitationより引用改編

では、筋タンパク質の合成作用はどのようにして高まるのでしょうか?

ここで重要になるのが「mTOR」という酵素です。mTORは筋タンパク質の合成や分解のシグナル伝達を制御し、筋肥大において主要な調整因子として注目されています(Yoon MS, 2017)。そのメカニズムをミクロな視点から見ていきましょう。

筋タンパク質の合成作用を高めるポイントは「筋トレ」と「食事」です。

筋トレをすることによって、ホスファチジン酸(PA)やインスリン様成長因子(IGF-1)、ホルモンを通じてmTORを活性化します。また食事によって摂取された炭水化物はインスリンの分泌を促し、タンパク質は必須アミノ酸としてmTORを活性化させます。このように見ると、筋肥大には筋トレだけでなく、タンパク質や炭水化物の摂取も重要であることがよくわかります。筋トレと食事が合わさることによってmTORが活性が最大化し、筋タンパク質の合成作用が高まるのです。

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Fig.1:Spiering BA, 2008より引用

2014年、初めて筋トレとアルコールの残酷な真実を報告したParrらは、アルコールによる筋タンパク質の合成作用への影響を検証しました。その結果、筋トレ後にアルコールを摂取すると筋タンパク質の合成率が最大37%も減少することを明らかにしました。

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Fig.2:Parr EB, 2014より筆者作成

これに対して、2017年、ノース・テキサス大学のDuplantyらは、さらにミクロな視点から検証を行いました。筋トレ後のアルコール摂取がmTORに与える影響を調べたのです。

◆ アルコールによるmTORの減弱作用には性差がある

Duplantyらは、トレーニング経験のある男女を被験者を集めました。被験者はスクワットエクササイズを6セット行い、トレーニング後に水またはアルコール度数15度のウォッカの水割りを平均500mlほど摂取しました。その後、3時間と5時間後にmTORを計測しました。

その結果、水の摂取に比べてアルコールを摂取した場合、トレーニング後3時間のmTORの有意な減少が示されました。これはアルコール摂取がmTORの活動を減弱させることを意味しており、筋トレ後のアルコール摂取が筋肥大の効果を減少させる可能性を改めて証明しています。

しかし、これでDuplantyらの報告は終わりません。

動物研究では、以前からアルコールの摂取がmTORの活動を減弱させるとともに、その減弱効果には性差があることが示されていました(Lang CH, 2007)。

このような知見からDuplantyらは、被験者を男女に分けて、男女間におけるアルコールによるmTORへの影響を比較、検証したのです。

そして、その結果は驚くものでした。

アルコールを摂取した場合、トレーニング後3時間のmTORは男性で有意に減少し、女性では有意な変化は認められませんでした。

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Fig.3:Duplanty AA, 2017より引用

この結果から、筋トレ後のアルコール摂取による筋肥大の効果の減少は、主に男性に生じることが示唆されたのです。

女性がアルコールの影響を受けない理由として、DuplantyらはmTORと筋タンパク質の調整因子である4E-BP1の存在を挙げています。4E-BP1は抑制性のタンパク質であり、筋タンパク質の分解を促進します。ラットのオスでは4E-BP1の活動がアルコールにより促進しますが、メスでは影響を受けないことががわかっています(Lang CH, 2007)。

しかし、これだけではメカニズムを完全には説明できないとして、性別におけるmTORとアルコールの関係をさらに検証する必要があるとDuplantyらは述べています。

これらの結果から、筋トレ後のアルコール摂取は筋タンパク質の調整因子であるmTORの活動を減弱させ、筋タンパク質の合成を妨げることによって筋肥大の効果を減少させることが示唆されました。さらに、mTORの活動の減弱には性差があることも明らかになったのです(Duplanty AA, 2017)。

 現代のスポーツ医学は残酷な真実にこう付け加えています。

 「筋トレ後のアルコール摂取は筋肥大の効果を減少させる」

 「そして、その作用は主に男性に認められる」

 この残酷な真実を受け入れるべきは、男性の皆さんです😭

少し難しかったですかね?

とりあえず、飲み過ぎには気をつけましょう♬

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